現代文たんブログ

現代文について考えたことなど。

オススメの現代文キーワード集

 月一ぐらいでなにか記事を書いておこうと思って、更新の進捗報告ついでに、オススメの現代文キーワード集の紹介でもします。

更新の進捗報告

 ようやく登録ツイートが250になりました。少ない。

 登録したいネタ自体はそれなりにあるんですけど、ツイートを書いているうちに「これってこういうまとめ方してよかったっけ?」「本当にこれこういう話だっけ」みたいになり、保留しているものが多くて……

 というわけで、学生時代ほどではないですが、本を読むようになりました。
 じつはここ二年ぐらい積読が増えていくだけで、全然読めてなかったんですよね。
 ひさしぶりの読書、けっこう楽しんでいます。(さっそくつまんない本にぶち当たったりしてしまいましたが、まあそれも読書の醍醐味かなと。)

 この作業も「科学論」「言語論」みたいに区切ってひとつずつ潰していくのがいいのかもしれませんが、それだと飽きちゃうので、読みたいものを読んでいます。さすがにもう少し効率化を図ってもいい気はするんですけどね。

 で、読書ついでに現代文の学参もひさびさにチェックしてます。

 そういうわけで、以下は現代文の学参ということでおなじみの「キーワード集」の話です。

現代文のキーワード集

 英語や古文に単語帳があるように、現代文にも単語帳があるんです。

 運営にあたって、なるべく多くのものに目を通していますが、これがけっこう面白くて。

 そもそもある程度専門的な文章を読むためには、ボキャブラリーが必要です。「具体/抽象」「絶対/相対」みたいな概念対はもちろんのこと、「他者」「権力」といった、術語というほどのものでもないけど重たい含みを込めて使われる言葉などがそれに入ります。
 文章を読むうえで、こういう言葉が躓きの原因になることも少なくありません。ほとんどの場合、書き手がいちいち説明を与えないからです。「これぐらい普通に「日常語彙」でしょ」とでも言わんばかりに、平然と使います*1

 このボキャブラリー、大きく分ければ三つになると思います。

(1)辞書を引けばわかる言葉・語句
(2)辞書を引いてもよくわからない、やや専門的な概念や術語
(3)辞書を引いてもこれといった説明が与えられているわけでもない、特殊な言葉・語句

 なかでも(3)が厄介なんです。(1)はそのつど辞書を引いたりして覚えればいいし、(2)はわかりやすい解説を探すことができます。けど、(3)に関してはそうもいかない。
 たとえば「契機」「市民」って言葉がどれぐらいの含みで使われるのかなんてのは、辞書を引いてもすぐには解決しません。本をたくさん読んだりして得られる経験知のようなもので、自覚的に学習することがやや困難です。(いまわたしが使った「経験知」という言葉も(3)に属す言葉かもしれませんね。)

 そこで有用なのが現代文のキーワード集です。(1)や(2)にあたる言葉を学習するのにも役立つんですが、(3)で大きな効力を発揮します。

 そういう視点で読んでみると、漠然とした経験知が整理・言語化されていって、けっこう楽しいんですよ。この概念をこれぐらい圧縮して説明してもいいのかという発見もあります。読むと簡単に教養が増えるのもいいですね。(良くも悪くも、あくまで「インスタント食品」みたいなものだと思っておいたほうがいいですが。)

 で、おそらくいちばん定評があるのはZ会『現代文キーワード読解』だと思います。
 2015年に改訂されて、内容のアップデートはもちろん、扱いのなかった小説の重要語についても新たに章が設けられました。細かいところで気になる部分はありますが、クオリティの高い教材です。

 もうひとつわたしが強くオススメしたいのは斎藤哲也編『読解 評論文キーワード』(筑摩書房)です。
 先ほども申し上げたとおり、けっこうたくさんのキーワード集に目を通しているつもりですが、率直に言って、評論文や論説文の語彙にかぎっては、これを越えたと感じるものにはまだお目にかかったことがありません。
 というのは、新しい内容に触れているという特色もあるのですが、それ以上に書き方、説明の組み立て方の「安定度」が頭ひとつ抜けているんです。経験知をすっきりまとめて言語化してくれていますし、背景知識的な論点に触れる際も偏りすぎず、典拠を示しながら(簡単な)歴史的背景に立ち入っており、読んでいる側としても安心できます。

 Z会のも良い教材なんですが、こちらももっと定番化してほしいなと思ってます。

*1:駿台の中野芳樹先生が『現代文読解の基礎講義』で示した「基幹知識」というのは、要はこの「書き手が平然と使用する重要語句」の存在を、背景知識とは区別してうまく言語化したものだと思います。